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ローカリゼーション業界の世界的なカンファレンス「LocWorld」における当社 CMO のセッション

ライオンブリッジの最高マーケティング責任者 (CMO) が Q&A セッションで語るローカリゼーション業界の展望

世界中の人々の暮らしと働き方に大きな影響を及ぼした激動の一年を経て、LocWorld イベント参加者の皆さまにライオンブリッジが考えるローカリゼーション業界の展望をご紹介する機会が訪れました。ローカリゼーション プロバイダーとそれぞれの社員が競争力を保つ方法、COVID-19 パンデミックが業界に及ぼした影響、また、企業が多言語で製品情報を提供する際に採用すべきアプローチについて、当社の最高マーケティング責任者 (CMO) を務めるジェイミー プニシルが Q&A セッションを通じて当社の見解をご紹介しました。

このブログ記事は、参加者から寄せられた質問とそれに対するプニシルが語った内容を簡潔にまとめたものです。 

質問: 今後、ローカリゼーション マネージャーが業務をうまく遂行するにはどのようなスキルが必要になりますか? 

プニシル: ローカリゼーション業界でマネージャーとして勤務する皆さまは自分たちの将来がどうなるか気になるところですが、一つ明確なのは、必要とされるスキルは確実に変わっていくということです。 

私はライオンブリッジの CMO として、多くのローカリゼーション プロバイダー企業における業務のあり方が、より「コネクテッド」、つまり、よりつながりのある形に変化していくであろうと考えます。現在、多くのローカリゼーション プロバイダー企業はちょうど工場のような体制で業務をこなしています。多くの場合、そこで勤務する社員やチームの主な関心事は作業の仕組みややり方であり、自分たちがビジネスにどのように貢献できているかということはあまり考えない傾向があります。  

たとえば、コンテンツをより多くの言語に翻訳することには熱心でありながら、用語集を強化する取り組みが会社の ROI や収支にどのように貢献するかといったことは検討されにくいのです。工場型のビジネスから次の段階に進むには、ローカリゼーション マネージャーの役割を、技術面中心のプロセスではなくグローバルなビジネスの実現をリードする役割へと一新する必要があるでしょう。そのような新しい役割においては、従来とは異なるスキルセットが必要となります。

マーケティング分野の進化は、今後のより大きな変化を予兆するものであると捉えることができます。ここ 20 年の間、マーケティング手法は極めてデータ主導型のアプローチへと変化しました。同じように、ローカリゼーション業界でもデータ管理における専門の知識やノウハウが今よりもはるかに重要になるでしょう。マーケティングでは Web、データ、各種チャネルを取り扱うだけでなく、品質についての議論も頻繁に交わされます。ローカリゼーション業界においてもこれらの点は共通しているため、マーケティングの分野と同じ変化がローカリゼーション業界でも起こるであろうと考えられるのです。

現在、多くのローカリゼーション マネージャーは主にプロジェクト マネジメントを担当していますが、これからは、新しい考え方を経営陣を含む企業全体に広めていく役割を担う必要があるでしょう。その考え方とは、ローカリゼーションは単なる生産行動ではないということです。

企業組織内には、たとえば「アジア パシフィック地域のビジネスを 10% 拡大するためには何をすべきか。当社にはそれに必要な能力は備わっているのか」といったことを問いかける人物が必要です。ビジネス チームからはそういった発言はあるものの、なかなか「では、ローカリゼーションの取り組みはどうすべきか」というようなもう一歩踏み込んだ話までには至らないことが多々あります。  

将来的には、たとえば「CGO (チーフ グローバリゼーション オフィサー)」と呼ばれるような、ローカリゼーションを担当する役職を経営陣に迎えることになるでしょう。そのような役職に就く人物は、ローカリゼーション部門を戦略的な存在として位置付けて、社内の人々に発想の転換を働きかけるような役割を担うことになると予想されます。

Points and line segments on a black background

質問: COVID-19 のパンデミックによって今後のローカリゼーションの方向性が変わったかもしれないとのことですが、実際にパンデミック下でどのようなことが起きたと感じますか?

プニシル: COVID-19 のパンデミック下で起きたのは、実はパンデミック以前から起きていたことなのです。たとえば、mRNA テクノロジーの研究、デジタル化を推進する動き、コンテンツの急増、ローカリゼーション プロジェクトの爆発的な増加、そして納期の短縮化などがあります。

ただし、パンデミック以前の世界では各企業が異なる形でそれらに対応していました。かつて、SF 作家のウィリアム ギブスン氏は「未来はここにある。それはまだ広くいきわたっていないだけだ」と語ったそうですが、パンデミック以前はその言葉のような状況だったと言えるでしょう。

つまり、一部の企業はコンテンツの急増やプロジェクトの短期化を見越し、対応策としてデジタル化を着実に進めていたのです。それ以外の企業では、この重要な取り組みが立ち遅れてしまったわけです。

パンデミックは、デジタルを通じた企業と顧客間のコミュニケーションに言語などの重大な問題が多数あることを浮き彫りにしました。以前は、たとえ企業の Web サイトが一部の地域にうまく対応していなくても、実店舗による売上で補完できるケースが多くありましたが、パンデミック下ではそれは期待できません。パンデミックという触媒によって、より多くの企業がデジタル化の重要性やローカリゼーションの真の価値に気付き始めたのです。

こういった企業では、まず言語の扱いについて検討しなければ、経営幹部同士で戦略的に重要な話し合いをすることすらできません。以前はそれができておらず、言語という重要な柱の存在自体にさえ気付いていなかったのです。多くの企業がそれに気付き始めたことが最大の変化だと私は思います。多くの企業がこの非常に重要なポイントに気付き始めたということは、私たちローカリゼーション業界全体にとって大きなチャンスだと思います。

「コンテンツの品質を重視するのをやめ、代わりにコンテンツのパフォーマンスを重視すべきだと考えます」
― ジェイミー プニシル、ライオンブリッジ最高マーケティング責任者

質問: 製品情報の翻訳の品質については、どう考えていますか? 機械翻訳 (MT) だけで良質なカスタマー エクスペリエンスを提供できるでしょうか?

プニシル: 製品情報を多言語に翻訳する際、企業はさまざまな課題に直面します。さまざまな社内用語、説明の詳しさ、権利を伴う名称などといった要因が翻訳の難易度に直接影響しますし、難易度自体も言語によっても異なります。

製品情報の翻訳を効果的に行うには、コンテンツの品質を重視するのをやめ、代わりにコンテンツのパフォーマンスを重視すべきだと考えます。企業の方針をそのように変えるには、ユーザーに対する影響を重視する姿勢が不可欠です。

まず第一段階として、自社のコンテンツをローカライズする理由、対応言語を追加する理由について明確な認識を持つべきです。規制要件を満たすため、新しい市場で販売する製品やサービスを増やすため、製品全体の販売数量を増やすため、カスタマー エクスペリエンスの指標であるネット プロモーター スコア (NPS) を上げるため、コール センターへの問い合わせ行動を先延ばしさせるため、あるいはビジネス パフォーマンスを示す重要業績評価指標 (KPI) の目標を達成するためなど、さまざまな目的があるでしょう。

人間による翻訳と MT の適合性評価については、コンテンツのパフォーマンスを測るテストを実施するとよいでしょう。そのためには、対象とする購入者層を明確にし、製品情報を対象言語に翻訳して製品を対象市場に投入する必要があります。MT を利用しない、人間による翻訳を採用する際には、翻訳のパフォーマンスと効果の大きさを測定しましょう。その結果が、以後の方針を決定する際の好材料となります。同じように、MT を導入することの適合性については基準となるベンチマークを設定するとよいでしょう。たとえば、コンテンツを閲覧する人数が 50 人ほどであれば、MT が最良のアプローチだと言えます。

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Janette Mandell
著者
Janette Mandell